로그인昔の中国風王宮に来た私。タイムワープってやつなのか。
難しい理屈に頭を使う気はない。
そんな高級な頭脳すら持ち合わせてない。
優雅な音色の笛と弦楽器。
ゆるやかに、部屋に吹き渡る風。
とても優雅な世界で、いつまでもこの屋敷にいたい、住みたいと願った。
天蓋ベッドの部屋から出た。
薄くて緑の絹の着物を着る私は、食堂を探した。
板張りの廊下を歩く。
まっすぐ進み、角を曲がり、またまっすぐ行く。
突き当たりに左右の廊下があり、右に行く。
あちこちに部屋があり、どこを曲がったのか、よく分からない。
それにしても、お腹が空いた。
お腹が空いたのに、だれも呼びに来ない。まさか、寝室で食事のわけもないだろう。
私は貴族。
優美に振る舞うの。そうよ。でなけりゃ、梅皇貴妃じゃないもの。
グルルル、グー。また、はしたないお腹の音。
体は正直だ。生き物として、しごく当然。
食事前にこちらの世界へ来ればよかった。そんなつまらぬ後悔をした。
皇貴妃の身分に合う食事を用意してほしい。
中国らしい食事。食べられそうなメニューを頭に思い浮かべた。
薄いピンクの饅頭、フカヒレのスープ、特製ラーメン。
点心で出るケーキ。北京ダック。アワビの煮込み。
とにかく、本で見た「満漢全席」のような、
そんな食事を期待しながら、
途中、女官がお辞儀をするので、小さく頷いて会釈した。
やっと、それらしい場所に来た。
天井の高い部屋だ。ここが食堂だろう。
「ここ、食堂かしら」
だれもいない食堂で呟いた。
「おーい、だれかおらぬか」
返事がない。
テーブルには皿数枚が重ねられているだけだ。他の食器も、箸、スプーンもない。
時間じゃないから、食べられないパターンかよ。
私は、空腹を我慢できず、隣の厨房を覗いた。
唖然とした。ここにも、だれもいない。
でも、いいものを見つけた。
饅頭が二つ、台座付きの食器に置いてある。
私がいただくわよ。
心の中で唱えるがいなや、素早く饅頭に手を伸ばした。
表面がぷりんとして、大きな饅頭だ。
手が動くより早く口が饅頭を迎えに行く。
かぶりつくように、腹を空かした熊のように、猛烈に饅頭にむしゃぶりついた。
そのあまりの旨さに、舌を噛みそうになった。
「うまい! ああ、生き返った」
あっという間に饅頭二つを平らげた。
私は小腹を満たし、恵比寿顔で食堂を後にした。
腹が膨れ、日当たりのいい縁側に腰かけた。
日本の庭園とは異なり、小学校にあったような
築山の前方には絶壁の巨岩がそびえている。
岩の前には複雑に曲がった池がある。
池の中央には鳳凰の像があり、天を向くくちばしから水が噴き上がっている。
池の周りには、柳と牡丹の木が植えられている。
それらの景色を見ているうちに、暖かな陽射しで、こっくりこっくりしてきた。
眠気を催し、気付くと廊下で寝そべっていた。
もしかしたら、ここは冬ではなく春かもしれなかった。
どこかの部屋から、漢文を読む声がした。
それも子守歌のようだ。
いつまでも、うららかな陽射しが私の体に降り注いだ。
桃源郷にいるような心地で、私は夢の中で遊んだ。
どれほど寝ていたのか。
太陽が雲に隠れている。
まだ夕方ではなさそうだ。
だれかが私の体に毛布をかけてくれていた。
優しい
毛布を畳み、ふぁーっと欠伸をした。
立ち上がると、何だかお腹が張っている。
「ん? これは」
私は便意を催した。大きい方である。
困った。場所が分からない。
困って歩き回った。
どこにもそれらしき小屋がない。
焦ってきた。
焦れば焦るほど、下腹部に「重み」が増してくる。
「昔の日本でも、便所は離れにあるのと違うかしら」
臭い部屋は、母屋とは違う場所にあり、悪臭が屋敷に漂わないように配置されている。
そんな風に考え、庭の方を見た。
あっ、あの築山の向こうにあずまやが!
便意の近い私は、急ぎ足であずまやへ向かった。
母屋とあずまやの間に庭を横切る渡り廊下がある。渡り廊下を渡った。
あずまやが見えた。
そこに便器もなにもなかった。
ただ、小さなイスが置いてあるだけで、そこから築山や池を見渡せるだけだった。
むろん、ここでしても、いいのかもしれないが。
「どうしよう」
私は母屋に引き返した。
困った、困った。
ちょうどそこへ、召使が来た。
渡りに船だ。
「あの、ちょっと。私はトイレを使いたいのだが」
「は? トイレとは?」
召使は首をひねる。
「便所」
「便所とは?」
「
「はて、よく分かりませぬ」
頭の悪い召使めが。
私は、ジェスチャーで用を足す仕草をした。
女性なので、大人の男性に対してするのがとても恥ずかしかった。
赤面したが、やらないと、排便のときが迫っている。
ようやく、通じた。
召使は手をぽんと叩いた。
召使は、「しばしお待ちを」と、私をその場に待たせた。
やがて、黒塗りの小箱を持って来た。
召使はそれを差し出した。
「なんじゃ。習字をするのではないぞ」
「ここにするのです」
「え! この箱の中に便を?」
「さようです。みんな、そうしてます」
「終わったらどうする? どうやってお尻を拭く?」
「別の女官がお尻をぼろ布できれいにします」
「じゃ、出したものは?」
「土をかけて、上から香草を散らします」
「は、はは。さようか」
私は複雑な気持ちだったが、了承するしかなかった。
現世の震災のときを思い出した。
当時、まだ中学生だった。
震災で私の地域は断水し、電気も止まった。
諸事情で避難所には行けなかった。自宅にとどまり、水が不足した。
トイレで流す水が足りず、父が使ってない植木鉢をトイレに置いた。
拭いた紙を植木鉢に入れ、上からトイレマジックリンを吹き付けなさい。父にそんな風に言われた。実際にそうした。
不衛生でも、そうやって
やがて水が出て、ちゃんと元の水洗トイレとして使えた。
発想としては、香草を散らすのもそれに近い。
「どこでやればいい?」
「人の見てない部屋ならどこでもかまいません。
「わかった。あの部屋でする。衝立と女官の手配を頼む」
「わかりました」
私はその部屋で着物を脱いだ。
白い着物と黒い帯姿になったとき、女官が衝立を持ってやって来た。
「頼んだぞ」
「はい。お座りください」
若い女官は涼しい顔で微笑んだ。
人生で初だ。他人のそばで排便するなんて。
とにかく、慣れてない。
でも、恥ずかしくてもやらないと。
すかさず着物をめくって裾をたくし上げた。
腰のひもをゆるめ、腰巻きをずらした。
お尻があらわになった。
私のお尻の下に、女官の差し出した黒塗りの小箱が差し出された。
振り向いて、位置を確かめようとしたが、箱が小さくて視界に入らない。
女官は私の後ろにひざまずき、口をきっと結んでいる。
私は用を足した。
またぞろ、生き物としてやむを得ぬこと。
顔が火照った。
女官の腕が少し動いた気がした。
女官は箱に便を受け止めた。
そして、箱を後ろに引き、右手に持った布でもって、私のお尻を何度か拭った。
「もうよろしいですか」
「うむ。だいたいよいぞ」
私は心を落ち着け、貴人らしく威厳を保って答えた。
女官は、着物から土を出した。
左手でばらばらと、箱の汚物に土をかけた。
かけ終わると、今度は香草をだして、土の上からかぶせた。
最後に、黒塗りの小箱に蓋をした。
どういうわけだか、中国の王宮のような場所で暮らすようになった私。しかも、都合のよいことに、皇貴妃という身分でいられる。とても嬉しい。中国の王宮の生活にもかなり慣れてきた。私は貴婦人である。相手として対象になる男性がいるなら、それは皇帝だろう。皇后とは風呂でご一緒した。さすがに皇后だけあって気品にあふれ、息を呑むほどに美しかった。私もそうありたいものだと思った。何かしたければ、お付きの召使か女官を呼べばいい。どんなささいなことでもしてくれる人たちだ。彼らを使うことに抵抗がなくなった。それだけ、信頼を置いていた。王宮には複数の女官と召使がいた。とくに夫似の召使が私の身の回りの世話をかいがいしくしてくれた。髪の毛を櫛で丁寧に梳[いてくれた。手の爪や足の爪をつんでくれた。着物を選んでくれた。喉が渇くと、お茶を持って来てくれた。ベッドメイクをしてくれた。湯あみのときに、桶や甕に湯や水を張ってくれた。暑いときはおおきな団扇であおいでくれた。寒くなれば、きっとその真逆のことをしてくれるに違いない。書を書くときは、墨と筆を用意し、終わったらきれいに洗ってくれた。つまり、私はとくに何もしなくてよいのだ。はじめこそ、夫似の召使は私のために献身的に働いた。自分で何もしなくても彼が率先し、代わりにやってくれた。きわめて楽ちんだった。小石を敷き詰めた庭に出た。園庭は美しく掃き清められ、枝ぶりがきれいに整えられ、見事だった。池にはおおきな錦鯉が泳ぎ、亀もいた。広い池にはサギが羽を休めていた。西の方から太陽が差し、池に光が反射する。サギの広げた羽に注ぐ陽光が、白い羽を明るく際立たせる。せっかく中国王朝に来たのだから、皇帝にお目にかかりたい。どんな人
どういうわけだか、中国の王宮のような場所で暮らすようになった私。しかも、都合よいことに、皇貴妃という身分にあるのだから、とても嬉しい。私は貴婦人である。相手として対象になる人がいるなら、それは皇帝をおいて他にいないだろう。何かしたければ、お付きの召使か女官を呼べばいい。実際、女官に服の着替えや、ベッドメイクをしてもらった。恥ずかしかったが、トイレを頼んだときもあった。彼らを使うのにも、すっかり慣れた。二十畳ほどの広い部屋に一人ぽつんといると、ちょっと寂しい。体に少しむずがゆさを感じ、入浴したくなった。召使を呼んだ。「風呂に入りたいのじゃ」「はい。準備して参ります。しばし、お待ちを」やがて、先ほどの召使がやって来て、私の前にかしずいた。この召使はよく目にする。私専用の係なのか。顔こそ違うが、背恰好が現世の夫に似ていた。夫似の召使だ、と心中で思った。「梅皇貴妃。こちらへ」廊下を通り、天井の高い大きな部屋に入った。人が十人以上入っても、ぶつからないくらいの広い空間だ。窓は中国風の装飾飾りで区切られている。赤や緑、金色で塗られている。梁や天井も、中国風の細かな彫刻と飾りが施されている。実に贅沢な浴場である。その部屋には、石組みの浴槽が一つあった。「ここにお立ちくだされ」「そうか」召使は大きな浴場内の中央にある、小型の建物に誘導した。建物内の建物だ。四本の赤い柱で支えられた、小型の屋根付き建物。「この小さな建物はなんという?」「これでございますか。四柱亭にございます」「よんちゅう、てい?」「さようで。四つの柱に支えられた『亭』にございます」「さようか」私は四柱亭と呼ばれる屋根付き建物の中心に立った。部屋の中にさらに屋根付き建物を配することが、いかにも中国っぽい。召使は大きな桶二つと無地の甕を三つ用意していた。桶に張った水から湯気が立ち上っている。どこかで水を焚いたのだろう。彼らは俯き、床を見ていた。片膝をついて、何かを待っている。「衣服をお脱ぎくだされ」あ、そうか。たくさんの人がいて、いろいろ準備をしているので、私自身がすることを忘れていた。「うむ。分かった。待っておれ」私は帯に手をかけ、スルスルスルと着物を脱いだ。脱いだ衣服は、女官が素早い動きで回収した。
昔の中国風王宮に来た私。タイムワープってやつなのか。難しい理屈に頭を使う気はない。そんな高級な頭脳すら持ち合わせてない。優雅な音色の笛と弦楽器。ゆるやかに、部屋に吹き渡る風。とても優雅な世界で、いつまでもこの屋敷にいたい、住みたいと願った。天蓋ベッドの部屋から出た。薄くて緑の絹の着物を着る私は、食堂を探した。板張りの廊下を歩く。まっすぐ進み、角を曲がり、またまっすぐ行く。突き当たりに左右の廊下があり、右に行く。あちこちに部屋があり、どこを曲がったのか、よく分からない。それにしても、お腹が空いた。お腹が空いたのに、だれも呼びに来ない。まさか、寝室で食事のわけもないだろう。私は貴族。優美に振る舞うの。そうよ。でなけりゃ、梅皇貴妃じゃないもの。グルルル、グー。また、はしたないお腹の音。体は正直だ。生き物として、しごく当然。食事前にこちらの世界へ来ればよかった。そんなつまらぬ後悔をした。皇貴妃の身分に合う食事を用意してほしい。中国らしい食事。食べられそうなメニューを頭に思い浮かべた。薄いピンクの饅頭、フカヒレのスープ、特製ラーメン。点心で出るケーキ。北京ダック。アワビの煮込み。とにかく、本で見た「満漢全席」のような、贅を尽くした料理の数々。そんな食事を期待しながら、涎が出そうなのをこらえて広大な屋敷の中をほっつき歩いた。途中、女官がお辞儀をするので、小さく頷いて会釈した。やっと、それらしい場所に来た。天井の高い部屋だ。ここが食堂だろう。「ここ、食堂かしら」 だれもいない食堂で呟いた。「おーい、だれかおらぬか」返事がない。テーブルには皿数枚が重ねられているだけだ。他の食器も、箸、スプーンもない。時間じゃないから、食べられないパターンかよ。私は、空腹を我慢できず、隣の厨房を覗いた。唖然とした。ここにも、だれもいない。でも、いいものを見つけた。饅頭が二つ、台座付きの食器に置いてある。私がいただくわよ。心の中で唱えるがいなや、素早く饅頭に手を伸ばした。表面がぷりんとして、大きな饅頭だ。手が動くより早く口が饅頭を迎えに行く。かぶりつくように、腹を空かした熊のように、猛烈に饅頭にむしゃぶりついた。そのあまりの旨さに、舌を噛みそうになった。「うまい! ああ、生き返った」あっとい
鳥が額にぶつかって、気を失った私──まったく、そんな偶然が起きるものなのか?いたって平凡で、それまでは変わったことなど何も起きなかった私。正月に縁起がいいモノと言えば、一富士、二鷹、三なすび。あの鳥は鷹。そうではなく、もっと小さかった。小さいけれど、鋭い加速だった。私を獲物と勘違いしたみたいに、まっしぐらに飛んできた。うん。ぶつかる前のことをちゃんと覚えている。私は、何もかもを失ったわけではない。記憶がしっかりしてる。ちゃんと命もある。体も五体満足で、手足も動くし、顔も首も、上下、左右に動く。恐る恐る、手を額に持って行く。ちゃんと、額はあった。ちゃんとあるし、穴も開いてない。凸凹がないのが、本当によかった。ぶつかった形跡は今のところなさそうだ。詳しいことは鏡を見ないと分からないが、傷はないような触り心地だ。よかったぁ。整形外科に通わなくて済む。でも、ちょっと待ってよ──私はここにいていいのだろうか。知らない場所に、いきなり来てしまった。お邪魔……ではないのなら、ま、いっか。自身の記憶はしっかりと頭に残っている。私は普通のマンションに暮らす、平凡な主婦で梅本香里。運悪く、高い階に住んでいた。それでなのか、大空から鳥が飛んで来た。鳥がぶつかった一瞬で、世界が変わった。どうしてこんな場所にいるのだろうか。どのように聞かれても、私には説明がつかない。夢でも見ているのか。そこははっきりした色と形から成る、独立した世界だ。たいへん、たいへん、たいへんよ。私はまったく知らない世界にいた。そこは王宮だった。私は王宮の建物の中にいた。そこは、明らかに、きれいな王宮だった。きれい? いや、いや。もっとすごい。きらびやかなとは行かないまでも、壁は朱塗りの壁であり、柱は太くて頑丈そう。天井に灯りはないが、部屋の四隅に行灯が配されている。昔の中国風の王宮であり、なんとなく何かの映画で見た風景である。そして、現世では高級な中華料理店でしか流れないような、優雅な音色の笛と弦楽器がどこかで奏でられている。仕切りのないこの部屋にゆったりした音色が、風に乗って運ばれる。「女子十二楽坊の音楽だわ」その程度の理解でも充分すぎるほどの、とても優雅な音の世界。そんな中、私は|天蓋《てんが
悪い夫にはどこかで罰が下る。そう思う私は愚夫の妻。どこにでもいそうなありふれた女だ。そして、夫も平凡を絵に描いたような、普通の会社員である。夫の性格は悪い。「このクズ野郎!」私は夫に怒りをぶつけた。「なんだと。だれが稼いで飯が食えてると思ってる?」夫は居直った。「はあ? 何様のつもりなの? つまんねぇ昭和の台詞ね」「つまらなくていい。こっちには仕事があるんだ。おまえを養う義務もな」「思い上がっちゃって。そんなんで、よく浮気したわね」「浮気はしてないよ」夫は平然と否定し、首を振った。「嘘つけ! 私には分かるわ。シャツにいつもと違う香りがしたのよ」「だから言ってるだろ? 帰りの電車が混んで、知らない女の香水かなんだかがついたんだろって」昨晩、夫の浮気でケンカになった。こんな風景は、我が家では日常茶飯事だ。そして、ケンカが収まらず、二人とも相手を無視し、黙ったまま朝の支度をした。そんな冬の朝のことだった。年も明けた一月八日。少し曇り、ときどき太陽が顔を覗かす。夫はこちらを見向きもせず、バタバタと出て行った。それを奥で確認し、私はIHコンロのボタンを押して加熱を止めようとした。夫が出て行って、ゆっくりとリプトンの紅茶を飲もうとした。お湯は沸いていた。「おーい。カオリ」玄関で聞き慣れた声がした。嫌な夫が戻って来た。私はツカツカと歩き、玄関を覗いた。玄関で夫は立ったまま、私に指示を出す。「忘れ物をした。机の上のUSBメモリ、取ってきてくれ」「知りません」「こら! 急いでるんだ」「自分でどうぞ」「フン。分かったよ」夫は玄関で靴を脱ぎ、ふてくされて上がり込んだ。小さな机の上にノートパソコンが置いてある。そこに挿しっぱなしになったUSBメモリを、ピンと抜いた、「バーカ」夫の背中に悪口を浴びせた。「行ってくるぞ」じつに忌々しげな言い方だ。腹が立つ。 「うるさい。早く行け!」私は顔を背け、玄関を指さした。玄関でバカな夫が、まだぶつくさと文句を唱えている。「なにさ。おまえが悪いんだろ?」そんな風に毒づきたくなる。「今晩も遅くなるぞ。飯はいらないからな」夫は飯か仕事のことしか考えてない。USBメモリも仕事で使うのだろう。家にまで仕事を持ち込まないで、と私は思う。でも、コロナのときはひどかった。家の中でリモート







